「君の膵臓をたべたい」を読みました
- 2017.05.15 Monday
- 22:02
こんばんは!
極楽錠前代表のKすがです。
今日は、脱力から少し離れて、最近読んだ本についてのお話し。
脱力の話はまだまだ続けられるんですが、ずっと同じだと、飽きちゃうからね。
で、最近、「君の膵臓をたべたい」を読みました。最近、文庫になったみたいです。
主人公は、クラスの中で一人でいることが多い、閉じこもりがちな男子高校生と、同じクラスの明るくて友達が多く、みんなに好かれる女子高生、山内桜良。山内桜良は、膵臓を病んだために、余命あと1年という状態になっている。そのことは、家族以外、クラスの親友や彼氏にも話さなかったが、ふとしたことから、主人公の男子高校生の知るところになってしまう。
男子高校生は、残り僅かな命である桜良に会い対峙しても、動揺せず、普段通りに接していく。自己完結し、他人の感情や状況に流されないで生きてきた男子高校生と、周りの人間との関係によって自分を形作ってきた山内桜良。二人の間は、恋とは違った風景を見せながら、徐々に男子高校生と桜良の距離が縮まっていく。
男子高校生の名前は、小説の最後まで明らかにされない。男子高校生ははじめ、【秘密を知っているクラスメイト】くん、であり、しばらくすると【地味なクラスメイト】くんになり、【仲の良いクラスメイト】くん、【仲良し】くん、と変化していく。そう、主人公の表記は、固有名詞ではなく、周囲の人間との関係が記述されているのだ。主には桜良との関係だが、ほかのクラスメイトや桜良の親友、彼氏との関係も常に【】書きで記載される。
桜良の病状が悪化し、男子高校生が見舞いに行く時には、彼の名前は【??????】くん、となっている。二人の関係というのが、言葉では表現できないものになっているのだ。男子高校生にとっての桜良、桜良にとっての【??????】くんの存在を、どのようにとらえてよいのか、読者にもわからなくなる。男子高校生は、自分が今まで作ってきた自分の感情の殻が、変化していっていることを感じる。
終章で桜良は意外な形で亡くなるのだが、その時に残された遺書によって、男子高校生は今までとは違った自分を獲得することになる。桜良に振り回されて、草舟のように従ってきた男子高校生は、「自分の選択によって桜良と過ごし、自分の選択によって自分が変わった」ことを感じる。「君の膵臓をたべたい」という意味も明らかにされる。
高校生の話ではあるけれど、人間同士の関係の変化や、主人公・周囲の人の気持ちの変化が、とても良く描写されているに思え、感動的な小説だなと思いました。二人の心のすれ違い、葛藤、異なるものへの憧れや戸惑い、相手を受け入れ、受け入れられたときの感情…。これは、高校生だけでなく、人間の普遍的な心の動きだと思います。むしろ大人のほうが、そういった心の動きを忘れているかもしれないので、この小説を読んで感動できるかもしれません。
映画にもなっているようですが、私は【】の部分の描写をどのように処理しているのか、気になったので、そのうち映画も見てみたいと思います。
第10回演奏会まであと96日!