『考えているつもり』という本を読みました

  • 2017.06.19 Monday
  • 23:28

こんばんは!

極楽錠前のKすがです。

 

『考えているつもり』 〜「状況」に流されまくる人たちの心理 サム・サマーズ著 を読みました。

人間性を考えるには、「状況」の力を考慮しなくてはならない、というのを多くの例から示しています。

人間の心は、その場の状況によって、容易に変わってしまう。だから、そのことも考慮において、行動する必要があるというのがメインの主張。

だれしも、自分が悪い人間とは思っていない。困った人がいれば助けようと思い、公衆のモラルを守り、男女・人種やいかなる差別的な考えはなく、正しいことを判断できる能力があると信じている。

ところが、実際の世の中はどうだろう?ごみは放置され、困った人がいてもそのまま通り過ぎる人がおり、差別はなくならず、正義は実現しない。(いろいろな人の、いろいろな正義がある、ということはあったとしても) 

 

これはなぜなのか?サマーズは、人間の心理は「状況に流される」からだ、と説いています。

 

例えば、白昼、大都市を走る電車の中で、大勢の観衆がいる中、脳卒中を起こした人を、誰一人助けようとした人がいなかったのはなぜか?男女差別、人種差別が禁止されているにもかかわらず、至る所で男女や人種間での昇進格差、昇給格差があるのはなぜか?それには合理的な理由があるのか?公衆のモラルを守るにはなにをトリガーにするべきなのか?

サマーズは状況に流される人間の心理の傾向を、具体例と実験結果を示して、つぶさに描き出します。

 

この本の中の話題をひとつ紹介します。ちょっと怖いお話なので、怖がりの人は見ないほうが良いかも。

 

心理学の分野では有名なのですが、ミルグラムの服従実験のお話し。「権威がいかに簡単に人間の判断に影響を及ぼすか」ということを考察した実験です。1960年代に始まった実験ですが、やり方を変えて繰り返し行われている実験でもあります。

 

ミルグラム実験の被験者は、『記憶・学習に関する実験の仕事(一定の報酬あり)』に参加してくれる協力者(20〜50歳の男性)を求めるという新聞広告を通じて集められました。

協力者は『学習における罰の効果』を測定するという実験目的について説明を受け、くじ引きで『教師役(罰を与える役)』『生徒役(罰を受ける役)』とに分けられました。が、実際にはすべての被験者が教師役になるように仕掛けがされていました。

 

教師役となる被験者は最初に『罰の痛みの体験』として、45ボルトの電気ショックを受けさせられて、生徒役の人が受ける痛みを体験します。

実験では二つの対になる単語リストを読み上げてその組み合わせを記憶する学習課題(=対連合学習の課題)を行い、生徒役の人が間違える度に電気ショックを与えるように指示されます。実際には『生徒役=サクラ(やらせ)』で、本当は電気は流れておらず、痛みはありません。しかし、教師役の被験者には、生徒役がサクラであることは分からないようにしてあり、『電気ショックを受けて痛がる(苦しむ)演技』を見て、生徒役が本当に電気ショックを受ていると感じられるように設定されていました。しかも、最初に自分自身も最初に電気ショックの痛みを経験しているので、教師役は生徒役の苦痛に共感しやすいはずでした。

 

教師役の被験者は、対連合学習の問題を一問間違えるごとに、15ボルトずつ電圧の強さを上げて罰を与えるように「実験者(権威者)」から指示されており、『生徒役の中止の要請(もうやめたいという訴え)』があっても電気ショックを与え続けるように言われています。罰の電圧を高くするにつれて生徒役が苦痛・恐怖を訴えるアクションが大きくなっていきます。

 

ミルグラムの実験開始前は、「被検者は、どんなに権威者から指示・命令を出されていたとしても、途中で『自分の同情・不安・判断』によって電気ショックを与える罰をやめるだろう(生徒役の苦痛の訴えや中止の願いを受け容れるだろう)」と予測されていました。

 

電圧が高くなるにつれて生徒役(サクラ)の被験者は、次第に『強い苦痛・恐怖・不安』を訴え始め、150ボルト以上になると『拷問を受けているような絶叫・悲鳴』を上げました。ところが、生徒役の強い苦痛にも関わらず、過半数の教師役の被験者は電気ショックを与えることをやめなかったのです。なんともショッキングな実験結果となりました。

 

生徒役の苦しむ声を聞いたり恐怖を感じている様子を見て、途中で電気ショックを与えることをもうやめようとした被験者も少なからずいたそうです。が、その時に白衣を着た権威のある博士役の人物が現れて、『実験をそのまま続行してください』『この実験はあなたに続行して貰わなくてはならない』『あなたに続行して いただく事が絶対に必要です』『迷わずにあなたは続けるべきです(責任は我々が負いますので)』などのコメントを冷静な態度で話して、被験者に飽くまで実験を続行するよう指示を出しました。その博士役のコメントによって、いったん電気ショックをやめようとした被験者でも、再び強い電気ショックを与え始める事が多かったそうです。

 

あるミルグラム実験の結果は、被験者40人のうち25人(62.5%)が用意されていた最大電圧である450ボルトまで、指示に従って電気ショックの電圧を上げたました。これは、相手役である生徒が命を失う可能性もある電圧であることを知らされていたにも関わらず、です。途中で実験の中止・辞退を申し出る人や、実験の報酬を返金するからもうやめたいという人も確かにいましたが、それでも博士役の人物の『実験の責任はこちらが負いますので続けてください』のコメントによって、300ボルト以下の電圧で電気ショックを与えることをやめた被験者は一人もいなかったという実験結果もありました。

 

実験の状況や条件を細かく変化させることで、『権威者(雇用者)の指示・命令に対する服従率』は0〜93%までの大きな変動が見られましたが、この事は人間の行動選択は常に『主体的・自律的・自由選択的』ではない可能性が高いことを意味しています。即ち、人間の行動選択は『相手の権威性(立場上の優位性)の有無』『自分と相手との上下関係』『権威者の指示の強さや内容』『指示・命令を実行する環境(状況)』などの要因に大きく左右されるのであり、自分が思っているような『善悪の分別・他者への思いやり・道徳観や倫理感』に従った行動選択が実際にはできないことのほうが多いということなのです。

 

ミルグラムの実験結果を思うにつけ、"I don't believe me!" というみうらじゅんの言葉が、身に染みる今日この頃です。まあ、私なんか逆にあまりにも自分の考えに執着するので、それも世間的には良くないのかも。でも…そう思っているだけで、私もやっぱり流されているのかなあ…。

この本、『考えているつもり』は、そんな人間心理にスポットを当て、自分の無意識の選択(状況に流された選択)を再度考え直すきっかけを考えさせてくれます。よかったら読んでみていただきたい一冊です。

 

演奏会まであと61日らしい。

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